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嬉野温泉の旅館大村屋で5泊6日ワーケーションしてみた

 

こんにちは。ライターの大塚たくまです。

 

ある日、佐賀県にある嬉野温泉旅館大村屋さんから「ワーケーションのトライアルをしているので、体験してもらえませんか」というご連絡をいただきました。「5泊6日も旅館で過ごせる」と喜んだぼくは二つ返事で承諾。しかし、すぐに疑問が生まれました。

 

「ワーケーションって、結局何だったっけ?」

 

自分が「バケーション」気分だったことに気がつきました。そうか、ワークするのか。わざわざ旅館でワークするのか。せっかく旅館にいるのに、嬉野温泉にいるのに、わざわざワークするのか。あれ、なんかもったいない……?

 

ワーケーション、ピンとこない!

 

困った時はTwitter。ぼくはワーケーションにピンときてる人がどれぐらいいるのか、アンケートをとってみました。

 

 

やっぱりみんなピンときてないじゃん!

 

そこで、今回は嬉野温泉旅館大村屋での5泊6日のワーケーションを通じて、いったいワーケーションとはどんなものなのか。そして、嬉野温泉とはどんな場所なのかを皆さんにご紹介したいと思います。

 

※この記事はかつて存在したWebメディア「be-topia」に寄稿した記事を再編集したものです。

 

 

そもそも、ワーケーションとは?


ワーケーションとは、「ワーク」と「バケーション」を合わせた造語です。

 

新しい働き方として「テレワーク」が浸透したことにより、会社で働く必要がなくなるケースは多くなりました。「働く場所は働く人が自分で選べる」という状況を活用して、コロナ禍の観光振興策として注目されるようになりました。

 

「働きながら、休暇をとる」

 

ワーケーションとは、これまでにはなかった自由で新しい働き方なのです。うーん……、ピンとこない。休暇に行くような場所で、働きたくないけどな……。

 

嬉野温泉の旅館大村屋とは?

 

ワーケーション先となる嬉野温泉は、佐賀県嬉野市にある温泉地です。温泉は入浴後に肌がつるつるする特徴のある重曹泉で「日本三大美肌の湯」としても知られています。

 

 

重曹泉が豆腐を溶かす特徴を活かした「温泉湯どうふ」は、地元の豆腐を地元の温泉で煮るという、嬉野の恵みを体感できる大切な名物です。

 

 

他にも豊かな香りと甘みが特徴の嬉野茶も有名。肥前吉田焼という陶磁器の産地でもあり、古くからの酒どころでもあります。

 

嬉野温泉は、温泉以外にも地場の恵みが豊富なところが魅力です。

 

 

そんな嬉野温泉でもっとも老舗の旅館が、江戸時代から続く「旅館大村屋」です。

 

写真提供:旅館大村屋

 

大浴場のほか、趣の違う4つの貸切風呂で嬉野温泉のすばらしい泉質を堪能できます。宿のコンセプトは「湯上がりを音楽と本で楽しむ宿」。湯上がりの時間を豊かな本やオーディオでゆっくりと楽しむことができるのです。

 

写真提供:旅館大村屋

 

温泉の醍醐味は入浴だけでなく、湯上がりの豊かな時間にもあることに気づかせてくれる宿です。こんな場所で「ワーク」できるんでしょうか……。

 

旅館でワーケーションなんてできるのか?




ワーケーション体験の日程が近づくにつれ、ぼくは期待とともに不安が混じった感情になっていきました。

 

「観光や温泉の誘惑に打ち勝って仕事できるのか?」

「旅館の中で仕事場所を確保できるのか?」

「満足にWi-Fiは使えるのか?」

「毎日旅館で食事をして体調を崩さないか?」

「嬉野に来た意味を感じることはできるのか?」

 

どうせ仕事をするのに「わざわざ温泉地に行く意味はあるのか?」という疑問は大きくなっていきました。

 

不自然な観光振興策なのか、コロナ禍に生まれた新しい価値観なのか。そこを確認したいと思います。

 

ワーケーション開始!仕事場所は確保できる?

ついに嬉野温泉でのワーケーションが、旅館大村屋にてスタートしました。

 

 

旅館といえば、やっぱり和室。畳の上で座椅子で作業……も考えましたが、執筆作業で長く畳の上に座るのは、腰が痛くなるんですよね……。

 

旅館大村屋のスタッフの方に「気づいたことは何でも言ってください」と話してもらっていたぼく。そんな不安をスタッフに話すと、すぐにテーブルを持ってきてくれました。

 

 

インターネット環境もばっちり。速度が遅ければ、別の無線Wi-Fiで対応してもらえます。これならまったく問題ありません。こうやって、困ったことがあればすぐに対応してもらえるのはありがたいですね。旅館ならではのホスピタリティ。

 

仕事場は客室だけではありません。

 


湯上がり文庫のカウンターでは、たくさんの書籍に囲まれながら仕事が可能。湯上がり文庫のそばには大浴場があります。

 

 

ちょっと疲れたら即温泉。日本三代美肌の湯で、お肌ツルッと、頭シャキッと切り替えられます。超贅沢な環境です。

 

 

湯けむりラウンジでは、自分が気になったレコードをリクエストしながら優雅に作業。

 

自宅ではまず置けないような高級オーディオ。アンティーク家具みたいな大きなスピーカーを通せば、聴きなれたビートルズのレコードも、いつもと違って聴こえます。

 

 

自由に飲める水出し嬉野茶も仕事の手助けをしてくれました。湯けむりラウンジでは、いつでもこの美味しいお茶が飲み放題です。

 

 

仕事ができるスペースは旅館の中だけではありません。

 

 

ここ嬉野温泉公園には、なんと電源付きのカウンターテーブルがあります。しかも、WiFiも通っているので、そのままPC作業ができるのです。

 

これぞ、究極のノマド。

 

 

塩田川のせせらぎを聴きながら、PCをカタカタ。日常とかけ離れた作業環境もたまにはいいな。意外と集中できて、2時間くらいここで作業していました。

 

誘惑に勝てる?温泉旅館でワーケーションは成立するか

 

ぼくが気にしていたのは「温泉旅館でワークしようという気になるのか?」ということ。

 

「せっかくワーケーションのために嬉野に行くんだから、しっかりと仕事をしないと」と不安でした。

 

結果的には、その「意識」がよい方向にはたらきました。むしろ普段よりもかなりメリハリが効いた生活になった気がします。

 

とくにありがたかったのは「食事の時間と場所が決まっていること」です。

 

 

朝食の時に「夕食の時間はいつにされますか?」という感じで尋ねられるので、1日のスケジュールの中で食事の時間だけが決定します。そのため「食事の時間までに、あの仕事を終わらせよう」と逆算できるのです。

 

写真提供:旅館大村屋

 

食事の場所が決まっているので、食事の時は仕事を一切持ち込まず、食事に集中できることもよかったです。

 

日頃の食事は、ディスプレイに目をやりながらPCのそばでラーメンをすするなんてこともしばしば。目の前の食事へ強制的に集中させられることだけでも、ぼくにとっては大きなリフレッシュでした。

 

 

「普段もこんな感じでメリハリが必要なんだなあ」と、おいしい料理の味を噛み締めながら実感。

 

食事は上げ膳据え膳ということも助かりました。洗濯以外、家事のことは何も心配なく仕事と暮らしに集中できます。旅館なので当然といえば当然なのですが、ワーケーションが始まる前にはあまり意識していなかった部分です。

 

 

ちょっと疲れたり、仕事の進みが悪くなったりしたら、すぐにお風呂に入ります。部屋にもお風呂があったので、そちらも積極的に使いました。

 

仕事中において、「温泉」は最強のリラックス法です。温泉に入る前と後では、別次元にいるかのような違いがあります。集中が切れた時、簡単に気分を変えられるので、助かりました。

 

 

音楽好きのぼくからすると、旅館大村屋が音楽に強い宿であることも助かりました。湯けむりラウンジで「今日は何を聞きながら作業しようかな」と選ぶのが楽しみでした。

 

このような楽しみがあるのは、旅館大村屋ならではかと思います。

 

毎日旅館で食事をして体調を崩さないのか?

 

ぼくが少し気にしていたのは、毎日旅館でごちそうを食べて、健康を崩さないかという面です。実際、旅館大村屋の夕食は内容は豪華だし美味しく、夢のような日々でした。

 

しかし、実際は翌日胃もたれするようなことはなかったのです。

 

 

野菜や海の幸が中心の食事。そして、品質の良いお肉を3~4枚いただくという感じ。お酒を飲むこともなく、毎日、あたたかい緑茶と一緒にゆっくりと味わいました。

 

コースでメニューが決まっているので、食べ過ぎることもありません。とてもありがたいことでした。

 

 

朝からたくさんの品目を食べられることもありがたかったです。

 

毎朝7時半という決まった時間に、じっくりと集中して朝食をいただく。この時間が仕事のメリハリにとても影響していた気がします。

 

 

毎朝の楽しみは、嬉野温泉名物のとろっとろの温泉湯どうふ。朝からこれをハフハフ食べて、体を温めるのです。湯どうふはお味噌汁のように体に馴染み、毎日食べても飽きませんでした。

 

むしろ、ぼくは湯どうふのために起きていました。

 

ワーケーションで嬉野の魅力を感じられるのか

 

「せっかく嬉野に来たのに、仕事ばかりしていたら、嬉野の魅力なんかわからないのでは?」と思っていました。

 

しかし、実際は毎朝の温泉湯どうふ、客室や湯けむりラウンジで飲んだ嬉野茶が美味しいし、とろとろの温泉も最高。実際は嬉野の恵みに感謝する日々でした。

 

 

いつも館内で仕事をしていたので、あまり観光という観光はしていませんが、旅館大村屋のトゥクトゥクに乗って街を散策できるサービスを使って、街を見てまわりました。

 

 

トゥクトゥクで連れて行ってもらった、立岩展望台からは嬉野市街を一望できます。すばらしい絶景を見られ、大満足でした。

 

日々の昼食も嬉野の魅力を感じとるチャンスです。

 

佐賀名物のシシリアンライス!美味しかった

 

旅館以外で食事をすることになるので、そこで嬉野市の飲食店へ積極的に足を運びました。そうすることで、思いのほか、かなり嬉野の魅力を感じることができたのではないかなと思います。

 

5泊もすると愛着がわくもので。帰り際はなんだか寂しくなってしまいました。

 

ワーケーションでの仕事の成果

結局、ぼくのワーケーションでの仕事成果は以下の通りです。

 

・Webメディア原稿 × 2本

・Webメディア編集 × 6本

・打ち合わせ × 2社

 

これはぼくの5〜6日分の仕事量に匹敵します。家で仕事するペースとまったく同じペースで仕事ができたのはよかったです。

ワーケーションのメリット・デメリット

5泊6日のワーケーションが終了しました。実際に体験してみて感じた、メリットとデメリットは以下の通りです。

 

ワーケーションのメリット

・リフレッシュしたのに仕事が進んでいる幸せ

・生活のリズムが整う

・長期滞在で愛着が湧く

・生活のお世話をしてもらえ、作業に集中できる

 

5泊6日、仕事をするけど、温泉に入り放題で美味しくて健康的な食事を食べ続ける毎日はとても幸せでした。ずっと旅館にいると、生活リズムが狂うと思いましたが、食事の時間が決まっているおかげもあり、むしろ整いました。決まった時間に食事をとるのって、大事なんでしょうね。

 

仕事をしていた時間が長いにもかかわらず、思った以上に「旅行した」という気分になっていたのには驚きました。「観光」って、意外と短時間で満足するみたいです。

 

そして、今回何よりも幸せだったのが「5泊6日もしたのに、仕事が順調に進捗している」ということ。旅行から帰る時は「はぁ、明日からまた仕事か」という気持ちになるのですが、ワーケーションの場合は仕事が滞ってないから、ただ幸せなだけ。それがこんなに気分爽快だとは。

 

もしかしたら、休み過ぎるよりも適度に仕事をした方が、リフレッシュになる人って多いのかもしれませんね。この充実感、体験する前は想像できませんでした。

 

ワーケーションのデメリット

・電源、Wi-Fi環境が悪いと仕事しづらい

・椅子が合わないと仕事しづらい

・近くにコンビニやスーパーがないと辛い

・コインランドリーが必要

 

ワーケーションのデメリットはやはり環境面です。とくにWi-Fiは「つながるのはつながるけど、プツプツ切れちゃう」なんて状態だと、仕事をする上ではアウトです。

 

旅館大村屋の場合は問題ありませんでしたが、Wi-Fiに不満があるとかなり大きなストレスになると思いました。ワーケーションを行う前に、Wi-Fiの回線速度などは確認しておきたいところです。

 

椅子が合わないと仕事しづらいという面もデメリットです。腰が悪い方など、椅子にこだわりの強い方はマッチする椅子がなく、辛い思いをする可能性は否定できません。

 

作業環境以外の面で言うと、近所にコンビニやスーパーがないと、飲み物や文具などの簡単な買い物ができずに辛いと思います。また、洗濯ができる場所の確認も必要です。

 

ワーケーションに持参すると便利なグッズ

さまざまなデメリットが存在しますが、ある程度は持参するグッズで対応できる面もあります。以下のようなグッズを持参すると便利です。

 

・延長コード

・モバイルバッテリー

・ポケットWi-Fiやテザリング可能なスマホ

・作業のお供になるお菓子や飲み物

 

延長コードやモバイルバッテリーはかなり便利です。この2つがあるだけで、旅館内で作業できる場所が格段に増えます。もともと、旅館は仕事をする場所としてつくられていないので、机はあっても電源まではない場合が多いのです。

 

またWi-Fiも整備されていても、不安定な場合が多くあります。可能であれば、ポケットWi-Fiやテザリングできるスマホを持参できれば安心です。

 

近所にコンビニやスーパーがない場合は買い物が困難なので、作業のお供になるお菓子や飲み物も、持って行っておくとよいでしょう。

 

ぼくらはいつだって「休みながら働いている」


休みながら、働く。なんだか特別な気がして、ピンときていませんでした。

 

しかし、ぼくは気づきました。ぼくらはいつだって、休みながら、働いているのです。場所が自宅なのか、旅館なのかというだけ。

 

休みの質を上げることで、働く質も上げる。ぼくにとってワーケーションとは、質の高い日常を過ごすことで、充実感を得る行為だとわかりました。

 

嬉野温泉旅館大村屋のワーケーションプランは、1泊11000円〜とのこと。5泊6日で55000円〜。こんなに気分爽快になれるのなら、またやってみてもいいのかもしれません。また別の場所で試してみるのもいいな。

 

ぜひあなたも一度やってみてください。あなたにはあなたなりの日常があるのと同じように、あなたなりのワーケーションがあるはずです。

 

旅館大村屋

住所:佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿乙848

電話番号:0954-43-1234

www.oomuraya.co.jp