こんにちは。ライターの大塚たくまです。
9月30日の鹿島アントラーズ戦で突如発表された「アビスパ2万人プロジェクト」。10月28日の横浜F・マリノス戦に2万人の集客を目指すというものでした。
現在の平均入場者数が1万人を切るなか、「2万人」という目標はあまりにも高すぎるというのが、ぼくの率直な感想でした。
いったい、クラブはどういう思惑なのか。川森会長に1時間半にわたって、アビスパサポーターから寄せられた質問について、インタビューにお答えいただきました。
今回も1万字を超えてしまい、「本当にサッカーの記事なの?」と思われるような、異例の濃さ。この企画をやる度に濃くなっていると思います。
今のアビスパを知って、さらにアツく応援したいコアなサポーターの皆様のために、メディアが取り上げない「リアル」をお届けします。
- アビスパ2万人プロジェクト実施の背景
- 「2万人の集客」をどう達成するのか
- 会場に2万人集まった際の懸念事項
- 2023年、アビスパ福岡の「現在地」とは?
- オールアビスパで、このチャンスをつかもう!
- 「アビスパ2万人プロジェクト」を盛り上げよう
アビスパ2万人プロジェクト実施の背景
アビスパ福岡公式サイトより
Q. 「アビスパ2万人プロジェクト」実施の経緯を教えてください。
━━「アビスパ2万人プロジェクト」の取り組みに驚かされています。アビスパトレインとか、なかやまきんに君とか。めちゃめちゃお金かかってるんじゃないですか。
はい。プロジェクトにお金は掛かってますが、今、クラブで潤沢な広告予算は存在しません。予算はチーム強化費に振り分けていますので……。
━━えっ、じゃあ、なんであんなプロモーションができるんですか?
このプロモーションは、AGA常任理事企業の大手広告会社とのタイアップによって実現できていることなんですよね。
AGA
アビスパ・グローバル・アソシエイツ。2015年に発足した、アビスパ福岡の支援団体。役員には数々の福岡が誇る大手企業の経営者が名を連ねている。
━━えっ、これクラブのプロモーション予算からではないんですね。あまり意識していないですが、AGAって凄い……。
AGAの常任理事企業の皆さんとは、9年間にわたり、ほぼ毎月会議をしているわけです。そういった中で大手広告会社として「何かできないか」というお話しになり生まれた企画ですね。
━━じゃあ、トレインジャックや、なかやまきんに君へのオファーなども、すべてそのAGA常任理事企業の大手広告会社によるものなんですね。
おっしゃる通りです。
━━いつごろから計画されていたことなんでしょうか?
クラブからの具体的なお願いや協議は約1年半前からです。「アビスパ2万人プロジェクト」の企画自体は1年程前ですね。そこから、コツコツ準備してきて、ようやく今、実現していることになります。
━━1年半の準備期間があったんですか!「アビスパが調子がいいから」と、突然企画されていたものじゃないんですね。
はい。トレインジャックや、タレントのアサインなども含めて、そんなにすぐにはできないですよね。
Q. なぜ10月28日なのか?
━━1年半前から準備していた企画を「10月28日」と決めたのは、いつごろの話でしょうか。
今シーズンの日程が発表された年始に協議を始めまして、決めたのは後期日程が発表された7月頃ですね。
━━「いつか2万人を」ではなく、「10月28日」という日程になったのは、なぜでしょうか。
時期を設定する上で重要視したポイントとして、十分な準備期間が取れるかという点と、集客のインパクトという点があります。その2点を考えた時に、10月28日がベストでした。
━━準備期間というのは分かるんですが、「集客のインパクト」というと、どういう視点になるんでしょうか。
後期であればあるほど、シーズンの順位が決まる重要な試合になる可能性が高いというのがまず一つ。また、前期はホームでの試合数が多く、日程が偏ってましたので、ご来場者が分散してしまい集客を盛り上げにくいという点もありました。
━━たしかに。10月は1試合しかないですもんね。
1試合しかなければ、集中してプロモーションができるじゃないですか。12月も1試合しかないんですが、12月になってしまうと遅すぎて、来季に向けた効果検証が間に合わないんですね。それで、10月28日になりました。
Q. 2万人集まったら、この後アビスパにどんな変化が起こる?
━━ここで実際に2万人が集まった先には、どんな未来があるのでしょうか。
詳しいことをお伝えすることはできないのですが、このようなプロモーションを行えば、2万人が集まったという実績ができることで、また今回のようなプロモーションが行いやすくなります。それと、シーズンオフに向けて選手たちの動向が気になる季節になりますが、アビスパ福岡ヘのモチベーションアップになると思います。
━━選手たちには、満員のベススタをぜひ見せたいですね。今回のような企画を持続的に取り組めるようになる可能性が増すということですか。
おっしゃる通りです。そのためにも、ここでしっかり2万人の集客を達成することは重要です。あとは、新たなチケット購入者が増えることで「JリーグID」が取得できるので、アフターフォローができることですね。
JリーグID
Jリーグの各種サービスでご利用いただける共通の会員IDサービス。JリーグチケットなどのJリーグが提供する各種サービスを同じIDで使える。クラブ視点で言えば、IDを持つアカウントにアプリやメールを通じたアフターフォローができる点は大きな利点である。
━━今はそうやって、「JリーグID」によって、新規のお客さんを追えるのが便利ですよね。最大限に活用する必要がありますね。
アフターフォローとして、来シーズンに向けて、プロモーションやお得なご来場クーポン企画を行っていきたいと思っています。
━━今回の取り組みが契機となり、より持続可能なプロモーションが行えるようになり、観客動員数がもっと増えると良いですね。
モデルにしているのは、北海道コンサドーレ札幌さんです。コンサドーレさんは、大手広告会社と2016年に長期契約を結び、プロモーションの強化やメディアへのアプローチを継続的に拡大して成果を出しているんです。プロの力を借りないと、やはりスピーディー且つクオリティー高く成果は出しづらいと思います。
「2万人の集客」をどう達成するのか
Q. 今シーズン、観客数が増えない原因は何だと考えていますか。
━━これに関してなんですが、触れておきたいことがありまして。そもそも、観客数は増えています。
そうです、増えています。
━━2022年の平均観客動員数は7,150名でした。そして、今年の1試合平均目標は7,800名だったんですね。それが、9月30日までの間で、平均9,024名。
そうです。前年比だと175%の数値です。J1に昇格したチームが平均40%増の観客動員になる中、コロナの影響もありますがそれを上回る数値となっています。
━━急激にビッククラブのような平均観客数になるわけがないですからね。無料招待券の大量配布を行っていないことを考えると、価値ある増加だと思います。こういう動きを着実に続けていかないといけない。
もう一点、注目すべき点としてはユニフォームが売れている点です。
━━えっ、ユニフォームってこんなに売れてるんですか?J1にいた2016年のほぼ2倍じゃないですか。2016年の平均観客動員数は12,800人程度だったはずですけど……たったの2500枚?
2016年よりも今の方が、断然ユニフォームが売れています。今やユニフォームの売上は1億に近いんです。当時は21万人以上動員して2500枚程度の販売数だったのが、今年はまだ13万人程度の動員で5000枚以上売れています。
━━今年のほうが、比にならないくらい濃度が濃いんですね。
本当にアビスパ福岡を応援してくれている方が来場してくれている数字の現れの一つだと思います。
━━見た目の来場者数だけじゃ、わからないなぁ……。データは重要ですね。
とはいえ、体感としても現れ始めていると思います。最近、X(旧Twitter)でも見かけませんか。サポーターの「スタジアムの雰囲気がいい」という声。
━━見かけます。何なら「1万人入っていた頃よりも良い」と。この間のルヴァンカップは、ぼくも行きましたけど、ゴール裏はもちろん、バックの雰囲気も最高でした。
ユニフォームやタオルマフラーなどを購入してくれたり、応援する気持ちの強い方々が来場して応援を牽引してくれるので、スタジアムの雰囲気も良くなっているんだと思います。
━━たしかに。そういったことを感じて発信する方も増えていますね。
Q. 2万人を呼ぶための目玉施策は何だと考えていますか。
━━10月28日に2万人を呼ぶための目玉施策は何でしょうか。まさか、「無料招待」の配布じゃないですよね……?
はい、違います。無料券の大量配布は過去の検証から後に繋がらないので、現在は行っていません。ただし、ホームタウンやフレンドリータウン、サッカークラブに入っている小学生の無料招待や、JID登録の未来場者へ割引クーポンの配信を今回は実施しています。
━━なるほど、そうですよね。では、目玉施策は何なのでしょうか。
目玉施策といいますか、今回の取り組みの狙いは「数多くのメディア、とりわけ地上波のテレビ番組にアビスパを取り上げてもらう」ということが一番ですね。
━━「2万人プロジェクト」の発表以降、かなりメディアに取り上げられていますね。
はい。もう、メディアの反応が全然違います。今回のプロジェクトはクラブのマーケティングスタッフとプロが企画を出し合い、メディアが取り上げやすいインパクトのある取り組みやキャスティングがされていて、その発表時には選手も協力して現場に駆けつけてますからね。福岡の全テレビ局から取材が来て、新聞や雑誌も一斉に取り上げてくれる。嬉しいですね。
━━たしかに。とくに「アビスパ2万人プロジェクト」のコピーである「アビスパ史上、今が一番おもしろい。」に似たフレーズをアナウンサーが口にするのを、何度か見かけました。
よく見ますよね。そういったキャッチーなフレーズの訴求もかなり影響が大きいと思います。そのメディアの効果は、今回のルヴァンカップの入場者が突然増えたことで、皆さんにも体感いただけたかと思います。
━━たしかに。売れていたチケットが2000枚前後と言われていたのが、蓋を開けてみれば6980名の来場。キックオフの時間に、当日券売り場に人が並んでいました。あんなの、はじめて見ましたよ。
発券枚数は7017枚でしたから、着券率も物凄く高い結果になりました。この2週間程度でかなりメディアに取り上げていただきました。その効果で、10月11日に大事な試合が開催されることを多くの方々が知って下さり、ファン、サポーター、スポンサー皆さんの協力もあって、このような数字になったと思います。
━━アビスパ福岡自体の成績もよいので、説得力も増しており、より追い風という状況ですね。
Q. 2万人を集客する見込みは立っているんでしょうか?
━━で、どうなんでしょう。2万人を集客することはできそうでしょうか?
それはベストを尽くして、当日のハーフタイムまでわかりません。
━━「集客する見込みがないと、こんなことしないでしょう」と言う方もいらっしゃるんですが……。
いや、そんな見込みが立つのであれば、こんな大々的なプロモーションをする必要ないじゃないですか。もうとにかく、最善を尽くして、結果を見守るのみです。
━━無料券を大量配布することで、2万人を超えようということでもないですか。
もちろんです。
Q. サポーターで協力できることはありますか?
━━サポーターは「2万人プロジェクト」に対して、どのようなことができるでしょうか。
公開しているWebチラシを周囲に配っていただいたり、ご友人や同僚の方、ご家族などを誘っていただくことが、一番ですね。
━━「新天町でビラ配りをしてみては」という声もありますが……。
「ビラ配り」そのもののリーチは、1000名程度でして、来場率は数パーセントです。人員とコストをかける割に大きな効果は見込めないんです。ビラ配りの活動も、やはり「いかにメディアに取り上げてもらうか」が勝負になります。
━━そうですよね。それで、今季は新天町の「練り歩き」を行いましたもんね。前回のインタビューでもお答えいただきました。
コロナ後、選手とサポーターが一緒に新天町の練り歩きを行ったことで、それがTVでニュースになる。そこに広告効果があるという取り組みでした。
━━今回は既にアビスパトレインなどで取り上げられていて、今さら「新天町で練り歩く」と言っても、メディアには取り上げられないでしょうね。
はい。難しいと思います。現場取材はメディアとしてもコストが掛かり、企業ですから反響の大きさなど費用対効果も求められますからね。
━━ここからは一人ひとりの取り組みが重要になりそうです。ぼくらはどんどん、この「アビスパ2万人プロジェクト」の仕掛けに便乗して、周囲を誘っていきたいですね。「アビスパ史上、一番おもしろいけん、まじで来て」って。
皆さまのご協力をよろしくお願いします!
Q. チケットの価格を下げないと、2万人なんて無理では?
━━「チケットの価格が高すぎるから、2万人なんて到底無理」という声が結構多くありました。このあたりは、どのように考えていますか。
まず、ダイナミックプライシングについてお話します。現状、ダイナミックプライシングのAIに頼りきりで価格設定を行うのは、課題があると考えています。
━━ただただ、値上げされ続けるという印象です。
そうですよね。ただ時流としてはこの仕組みを使うメリットも確かにありますので、現状ではダイナミックプライシングのAI運用のみでなく、販売済み席種のヒートマップの検証や、席種ごとの価格差をクラブの経験値と融合した、ハイブリット運用が適正かと思っています。
━━これからダイナミックプライシングに取り組むというクラブも存在する中、先にそういった知見を得られたのは良かった面もありますね。
はい。また、チケットの価格という面では、ゴール裏のS1を、前売・当日共通で大人2,000円、小中高1,000円の席として、用意するようになりました。
━━でもそこって、アウェイの応援席の横のゴール裏の席ですよね?どちらの応援団もいないゴール裏なんて。そこの値段が下がっても、あまり意味ないんじゃないですか。
いえいえ、そんなことはありません。当初は100枚売れることもほとんどなかった場所であるS1が、今では100~300席ほどコンスタントに売れるようになりました。お子さま連れの家族利用が多いようですね。
━━え、3倍くらい売れることもあるということですか。それはすごい。ちゃんと機能しているんですね。
値段がネックになったり「ちょっと家族でサッカーを」というライトな方の受け皿になっているようです。それで、今度はホームゴール裏やバックスタンドで観たいと感じていただければ、席種をグレードアップしていただくスタイルですね。
━━まあ、実際にチケットは売れていて、観客動員数も増えている状況ですからね……。高いと感じるならS1という選択肢もあるわけですし、現状の「チケットが高い」と感じる方に向けて値下げするより、その分の料金を払ってもらえるような価値を伝えるという選択をされているということですね。
会場に2万人集まった際の懸念事項
Q. 1万人に満たない状況でも、ハーフタイムのコンコースが混雑していますが、2万人に対応できるのでしょうか。
━━コンコースの混雑はたしかに気になる。
混雑に関しては、試合当日の運営を行っているイベント会社と打合せています。3万人〜4万人クラスのコンサートやイベントを運営している実績のある企業です。
━━専門の運営会社に一任していると。
クラブが細かく指示をだすということでなく、ご来場予定人数に合わせた入退場の運用設計をしてもらい、必要な費用を掛けるといった運営になります。2万人の見込みがある場合は、運営会社さんに2万人の対応をお願いするという形になります。当然ファン、サポーター皆さんの心配やクラブスタッフの気づきの部分は、事前に伝えて準備したいと思います。
━━まあ、そうですよね。2019年のラグビーのワールドカップで2万人が入ったことはありましたが、特に大きな混乱もなかったですしね。もちろん、ほぼ満席なので混雑はしましたが。それは、大型イベントでは当然ですし。
当日の来場見込みは、これから随時アナウンスしていく予定です。いつも以上に混雑する場合は事前にわかりますので、混雑することは想定した上での行動をご協力いただくことになると思います。2万人以上であれば、規制退場を行うようなマニュアルもあります。
━━ほぼ満席なら、それはもちろん「混雑」はしますからね。混雑するだけで、普段のアビスパ観戦と違うので、クレームは起きそう。でも、2万人のイベントならいつもと違う混雑が起きるのは当然です。「混雑するイベントに参加する」という心構えで、互いに配慮することも重要だと思います。
Q. 臨時バスの増便はありますか?
━━臨時バスの増便という声、よくあるんですが、これは西鉄さんの話ですからね……。サポーターの皆様に福岡の最新情報としてお伝えしておくと、そもそも、西鉄バスは現在運転士が不足しており、便数も減っています。簡単に臨時バスは増やせない状況です。
現時点ではこれはなんとも言えません。クラブとしては事前に来場見込みを伝えて増便をお願いしたり、クラブ自前で輸送バスを発注して運行するといったことだと思いますが、タクシー会社同様運転手不足が深刻です。
━━そうなんですよね……。
すぐできる対策としては、今までアナウンスしていなかった、博多や天神などからベススタ周辺に一本で行ける路線バスの周知ですね。席田会館停留所も近いですね。
━━たしかに。あるにはあるんですよね。博多駅のバスターミナルから、東平尾のバス停まで行けるバス。天神から乗れるバスもあるんですね。それはたしかに、もっと知ってもらってもいいですね。
DAOのホルダーさんからそういった提案があり、バスの乗り方を説明する写真を撮影してくれた方もいらっしゃいます。バスの乗り方を解説するページは、急ピッチでつくっているところですね。
━━それはいいですね!公開を楽しみにしています。
Q. スマートフォンの電波が繋がりません
━━ベススタのスマホが繋がらない問題は、何とかなりませんか?とくにドコモユーザーとソフトバンクユーザーは繋がりにくいようです。
各キャリアには、試合開催時に電波が繋がりにくい事象があるということは知らせており、把握していただいています。ただし、そんなにすぐ対策が講じられるわけではないようですが、先日両キャリア共に現地の改善工事中と連絡が来ています。
━━移動基地局みたいな対応はできないのでしょうか?
イメージされる方も多いかと思いますが、移動基地局を呼ぶのは災害時以外は簡単ではないようです。ただ、把握はしていただいているので、準備が進んでいるのは事実です。
━━なるほど。それを待つしかないのか。とはいえ、チケットのQRを開くのに時間がかかったりするんですよね。もう電波は繋がりにくい前提で、会場で使用するQRコードは先にウォレットに入れたり、スクショしたりしておくのが良さそうですね。
たしかに、そういう案内はできますね。
━━ひとまず、2万人プロジェクトに関する質問は以上です!
アビスパ2万人プロジェクトのポイント
- メディアにアビスパを取り上げてもらうのが肝
- 効果を1試合に集中させて効果を最大化する
- クラブの予算ではなく、AGA常任理事の大手広告会社のスポンサード
- 成果が出れば、このようなプロモーションを持続的に行える可能性がある
- 2万人が集まった時の混雑の対応は、専門運営会社の手を借りて最善を尽くす
2023年、アビスパ福岡の「現在地」とは?
「アビスパ2万人プロジェクト」に直接的に関連する質問は終わったのですが……。
貴重な機会なので、アビスパ福岡のクラブ経営について、もう少しお話を聞かせていただくことにしました。
Q. 収益は上がってきていますよね?
━━無料券を使わずに観客動員数が伸びてきて、ユニフォームも売れている。スポンサー企業も850社を超えています。ということは、収益はけっこう上がってきていますよね。
おっしゃる通りです。現在の売上について、グラフをご覧ください。
━━えっ、こんなに伸びているんですか。
直近決算のクラブの営業収入は過去最高額を更新して二期連続更新です。
━━今、過去最高額なんですか。これはすごい。
他のJ1クラブの営業収入と比較すると、このようになります。
━━あっ……。まだ他のクラブと比較すると、こんなに差をつけられているんですね。
そうなんです。売上高だけを見ると、このような状態です。ただし、売上高の成長率は、該当年度に昇格したクラブを除いてJ1クラブで第1位の32.7%増という状況です。(2023年5月時点)
━━なるほど。まさに今はアビスパが大きくなろうとしている、途中なんですね。
はい。アビスパの戦績は、監督や選手、チームスタッフの頑張りによってクラブ史上最高のスピードで急激に上昇しています。クラブも過去最高のスピードで成長していますが、コロナ禍もあり一企業として成長するスピードにも一定の限界があるのも事実です。ここ数年は成長過程によくある現象ですが、いろいろな部分でアンバランスな状態が続いていますが、必ずバランスを整えたいと思います。
━━この流れを絶対に止めたくないですね。今こそ応援しないといけないな……。
サポーターの皆さんが頑張ってくださっている。チームも頑張っているし、事業スタッフも全力で頑張っています。それが数字にはしっかりと現れているんです。
Q. とはいえ、赤字債務超過ですよね。
━━このような数字は出てきていますが、現状は赤字債務超過ですよね。
その通りです。コロナ禍でJ1に昇格してチームへの投資と収入のバランスが一気に崩れました。だからこそ、私たちは浮かれず足元をちゃんと見てクラブ経営をしていく必要があります。ここ数年アビスパ福岡のビジョンに共感して、新たにユニフォームパートナーになっていただける企業も増えています。地道に、愚直に、継続すること。それが基本です。
━━「アビスパ2万人プロジェクト」とは、真逆の世界観ですね。
基本はあくまで、地道な活動の継続にあります。
━━ちなみに、赤字債務超過の状況を立て直す目処はあるのでしょうか。
Jリーグのライセンス制度が再発動されるタイミングには当然解消します。現在、アビスパ福岡は私と社長の古屋の2代表制になっています。出向元の企業として、2人も代表を送り込んでいることが何よりのメッセージと思います。
━━まあ、そうですよね。そこまでやって「債務超過を解消できませんでした」じゃ、済まないですよね。
そうです。それだけの熱量で赤字債務超過の解消に取り組んでいると思っていただければと思います。
Q. 新社長は前には一切出ないの?
━━ちなみに古屋社長は、一切前には出てこないのでしょうか?
二人で役割分担を決めてスタートしています。そもそもなんですが、クラブの社長がこんなに前面に出てメディアにも積極的に顔を出すということは、基本的にはあまりないと思います。私はもともとフランチャイズ事業でメディアからコンシューマー対応までしていたので、今はクラブの変革期に必要なミッションだと思い、クラブスタッフと協力して対応しています。
━━まあ、たしかに。古屋社長はどのような業務を行っているのでしょうか。
クラブの社長となると、予算管理や社内の決裁業務、本社とのリレーションとか、細かいけれども、重要な実務が大量にあります。そこに集中しています。
━━なるほど。ちょっと私たちが想像する、企業の看板というイメージの「社長」とは違うかもしれませんね。
そうですね、創業者の社長が前面にででくるイメージとはかなり違うと思いますし、J1リーグでも社長が前面に出てくるクラブはほぼないと思います。また、今のクラブにとって本当にやらなければならないことに、さらに時間を掛けるということを考えて、2代表制にしてますので。
Q. 川森会長の「本当にやらなければならないこと」とは?
━━気になるフレーズがありました。川森会長の「本当にやらなければならないこと」って、何でしょうか。
J1リーグ各クラブの事業規模と肩を並べるべく、新たなパートナーシップになる企業の開拓や、アップセルの営業活動です。営業活動はコミュニケーションが大切で、ビジネスライクにロジックだけでスポンサードが決まるわけではありません。先様としっかり時間を重ねて向き合い、信頼関係を構築しながら一つ一つ積み上げていかなければなりません。
━━なるほど。そのような川森会長の動きによって、大きな資金をクラブにもたらすことができるわけですね。
それが大事なミッションのひとつだと考えています。そういった時間を確保するために、社長業の実務については、まだ弱冠34歳ですが、損益管理と決裁権限をもって古屋社長に頑張ってもらっているという状況です。
オールアビスパで、このチャンスをつかもう!
━━今回もたっぷり質問にお答えいただきました。ありがとうございます。
こちらこそ、ありがとうございます。大塚さんには、もう4年ほどこういう活動をしてもらっていて、本当に助かっています。説明しにくいことを表現できる場をいただけるので、ありがたいです。
━━そうか、もう4年になりますね……。
大塚さんはサポーターの意見に大量に触れて、クラブ側の視点にも触れる。その両方の視点に触れた上で、自分のスキルやパワーで何ができるのかということを考えて、実行してくれる。クラブとサポーターの、両方のサポートをしてくれていると感じています。
━━そう言っていただけると、ありがたいです。アビスパに関わると、さまざまな声がSNSを通じて、届くと思います。サポーターは愛すれば、愛するほどに、不安が募る方もいらっしゃいます。そうした声がネガティブにしか響かないこともあると思いますが、それもサポーターの「愛情表現」と思って、汲んでいただければと思います。
はい。そこは大塚さんも最初に経験していますからね。でも、本当にそこは重要な部分です。ボタンを掛け違えると負のスパイラルになりかねませんので、社員には「自信を持って仕事するように」と伝えています。
━━やはり「自信」を失いそうになることがあるということですか。
SNSで触れる大衆のネガティブにとれる言葉のパワーは強力です。特に社員はそのパワーに慣れているわけではありません。精一杯業務に邁進していても、そうした声をSNSで浴びることによって、大衆の声に潰れてしまうということがあるんですよね。
━━そうですね。ポジティブな言葉よりも、ネガティブな言葉のほうが、いつまでも心に残ります。
仕事上で失敗したり、気づかなかったことを指摘されることは当然なのですが、それが匿名性の高いSNSで大衆の声として届くときに、滅入ってしまうこともあるということです。
━━せっかく一生懸命に最善を尽くしているのに、そうした声でモチベーションが下がってしまうことはありますからね。
だからこそ、社員には自信を持ってほしいです。クラブの歴史上最高のスピードで、業績もチームの戦績も結果となって出てきてるからです。選手、監督、チームスタッフ、事業スタッフ、スポンサー、サポーターの皆さん、後援会、ボランティアの皆さん、取引企業の皆さん、そして支援頂いている自治体をはじめ関わる全ての皆さんもです。みんなそれぞれの立場でアビスパのために一生懸命頑張ってると思います。
━━そうですね。1996年のJリーグ昇格以来、初めて訪れたこの流れ。絶対に止めたくありません。だからこそ、オールアビスパ福岡で「アビスパ2万人プロジェクト」を盛り上げて、このチャンスをつかみたいですね。
これからもどうかサポートをお願いします。今回はありがとうございました。
━━ありがとうございました!
「アビスパ2万人プロジェクト」を盛り上げよう
今、まさにアビスパ福岡が変わろうとしています。
「アビスパ2万人プロジェクト」を立ち上げてくれたAGAの力強い後押し、説得力を強めているクラブの成績。10月28日は、今後のアビスパ福岡の運命を左右する、ビッグチャンスです。
だからこそ、今こそみんなで盛り上げましょう。アビスパ福岡の魅力を、今こそ。今なら。きっと伝えられるはずです。
アビスパ史上、今が一番おもしろい。
でも、おもしろいのはここからです。
アビスパ福岡の新しい歴史へ向けて、みんなでいま、スタートしましょう。