こんにちは。ライターの大塚たくまです。
この度、Adobe Acrobatのオンラインツールを知ってもらうPR企画「僕と私の確定申告」に参加するため、確定申告に関する記事をつくることになりました。
確定申告……。嫌な響き。面倒くさい響きです。「確定申告の書類を準備する時間のすべてを仕事に使ったら、どれぐらい稼げるだろう」なんて、考えることもありました。
「そもそも、開業したときに税務署に届け出るからいけないんじゃないか」
そんなことを「フッ」と考えたこともあります。「フッ」とですよ。「本当にそうだ」という結論にはなりませんよ。とはいえ、実際そんな人も存在するよな……?
「無申告だと追徴課税になる」とは聞くけど、日本中にこれだけ人間がいるのに、一人ひとり調べて、無申告を発見するなんて実際問題ありえるんですかね。
そこで「無申告をどうやって発見するのか」を、税理士の方に聞いてみました。
- なぜ無申告は発見されるのか?
- 無申告の税務調査って、どんな感じで来るの?
- そもそも「税務調査」って、どんな感じ?
- 無申告の人が初めて申告するときって、どうやるの?
- 無申告で依頼する人を軽蔑しないの?
- これからの確定申告はデータ化で準備しよう
なぜ無申告は発見されるのか?
今回、この企画にご協力いただくのは「focAs会計事務所&労務事務所」の代表税理士、坂根正哉さんです。
坂根正哉 氏
focAs会計事務所&労務事務所の代表税理士。東京税理士会渋谷支部所属。資格の学校TAC 税理士講座の簿記論・法人税法の非常勤講師。企業・地方自治体・法人会での研修実績も多数あり。
──あの、今日の質問内容は、ぼくが「シゴト」として聞いているものであって、質問内容とぼくを切り離して聞いてほしいんですけど。
かしこまりました。
──どうして無申告って見つけられるんですか?
……そうですね。報酬が発生する時って、受け取る側だけでなく、支払う側も帳簿をつけますからね。それで見つかりますね。
──はい。まぁ、そうですよね。その理屈はわかるんですけど……。
はい。
──あの……これだけ膨大な数の人間がいるわけじゃないですか。照らし合わせて見つけ出すのって、難しいんじゃないですか?
まあ、基本的にはマイナンバーなどで紐付けができるようにしていると思うんですよね。だから、それと照らし合わせれば、すぐにわかっちゃうと思います。
──そうか、マイナンバー……。でも、いちいちチェックするというのは、厳しくないですか? 日本中には、たくさんの人間がいるわけだし……。
……なんか、大勢の人に隠れようとしてます? 無申告は犯罪ですよ。
──あっ、質問内容とぼくを切り離してください。
……そうでした。税務署のシステムで機械的に分かるようになっていることも考えられますよね。アラートがついたり。無申告はもちろん「あまりにも所得が少なすぎるよね」とかも分かるようになっているはずです。
──なぜか書類を大量に処理するイメージでしたが、そうか、機械化されていますよね……。でも、個人間のやり取りだったら、バレないんじゃないですか?
仕事をして報酬をもらった側は無申告でも、報酬を払った会社は申告していますよね。その状態で報酬を払った会社に税務調査が入ると、細かく調査されるので、そのときにわかりますね。「本当に報酬を払ってる?」ということを確認されるはずなので。
──そうか……。そして「あれ、あなたなんで申告してないの?」って、見つけるわけか。仕事をすればするほど、相手は申告するので、証拠を残していっているわけですね。
無申告の税務調査って、どんな感じで来るの?
──税務調査に関する最初の連絡って、どういう感じで来るんですか?
郵送や電話で「税務調査をさせてください」といった連絡が来るのが、一般的かと思います。
──それはもう、拒否できないんですか。
無申告の人は、もう税務署が郵便物を送っている段階で、もうどうしようもないですね。連絡が来てからでも、とにかく申告したほうがいいです。申告してから、調査という流れになったほうがいいですね。
──それはどうしてですか?
申告をしたことがない時点で調査されると、重加算税の40%と、無申告加算税の15%がとられるんですけど、申告しておけば重加算税をとられる可能性が減りますし、無申告の15%も5%に減ります。
──そんなに減るんですか……!
本税(通常の税額)100万円が、無申告のままだと、本税100万円+罰則55万円=155万円になってしまうんですね。でも、期限後でも申告しておけば本税100万円+罰則5万円=105万円に抑えられる可能性もあるので……。とにかく、申告したほうがいいです。
※別途発生する延滞税は度外視しています
そもそも「税務調査」って、どんな感じ?
──そもそも「税務調査」って、よくあることなんですか?
まあ、10年に1回は来るかな……という感じで。税務調査自体は、そんなに特別なことではないですよ。
──「この前、税務調査が来て……」みたいな話を聞くと、「あれ、この会社は怪しいのか?」なんて、フワッと思ったりするんですけど……。
そんなことは無いですね。「確認」というレベルなので。
──必ずしも「ん?コイツやってんな?」と思って来ているわけではないんですね。
「強制捜査※」とは全然違いますよ。税務調査に平等に回っている姿を見せることで、不正を抑制している意味合いもあると思います。
※強制捜査
脱税の疑いがある場合に、裁判所から令状を得て行う捜査。納税者はこの捜査を拒否できない。この捜査を担当する国税局査察部の通称である「マルサ」と呼ばれることもある。
──なるほど。パトロールとか、道路の検問みたいなものですかね。
まあ、それに近いです。任意の税務調査※が来ること自体は、検問に引っかかるくらいの出来事ですね。
※任意調査
一般的な税務調査のほとんどが任意調査。税務署の職員は納税に関する質問をしたり、帳簿の提出を求めたりできる「質問検査権」を持っている。納税者は、正当な理由がない限り、調査を拒否できない「受忍義務」があるため、「任意」とは言えども、安易に拒否はできない。
──企業への税務調査がよくあるというのはわかるんですけど、個人にもよくあるものなんですか。
はい、よくありますよ。法人の方が入りやすいという「説」はありますけど……。
──とは言え、個人だとそんなに稼いでなかったりもするじゃないですか。そんな人にいちいち税務調査なんてやらないんじゃないか、とも思うんですが……。
まあ、ある程度の売上、利益が大きなところに優先して入るんじゃないかとは思います。経費の割合が大きいところにも、確認の意味で入ることはあるでしょうね。
──じゃあ、あんまり規模が大きくなければ、無申告でも税務調査は来なさそうですよね。バレないんじゃ……。
……大塚さん?
──「ぼくが」という話ではないです!! 切り離して!!
そうでした。先程も言いましたけど、企業から支払調書が出れば、すぐにわかっちゃうので。
──そうでした、そうでした。逃れられませんね。
無申告の人が初めて申告するときって、どうやるの?
──実際に坂根さんは、無申告の方の処理をすることって、よくあるんですか。
ありますよ。「5年分まとめて」とか。
──やっぱり、個人で放置している方が多いんですか。
個人の方のほうが多いですけど、法人でも放置している場合もありますね。
──そういう場合って、どんな作業から始めるんですか?
売上と経費の把握ですね。資料を溜め込んでいて、ただやっていないという場合は、ごっそりもらって、ごっそりやるしかないですね。
──その場合って、すごい作業量ですよね……。想像を絶する……。
ものすごいですよ。1か月では、まず終わらないですね。税理士の日常業務にその作業を加えていく感じなので、かなり大変です。
──無申告の処理の仕事はハードじゃないですか。断ることはないんですか。
断ることはしませんよ。それが税理士の仕事ですからね。それに「これからはちゃんと納税したい」という一歩を踏み出すために相談に来ているわけですから。様々な事情で依頼されない場合でも、自分でやる方法のアドバイスはしますね。
──無申告の時は、やっぱり税理士に相談したほうが、いいですよね。
まあ、そうですね。税務署は節税の相談には乗ってくれないので。いくらかお金を払っても、税理士に依頼したほうが安心かとは思います。
──税理士がいて、資料があれば、何とかなりそうですもんね。
そうです。問題は資料がない場合ですね。請求書や領収書がなくても、通帳の記録は残っていると思うので、まずは通帳からですかね。
──通帳の記録か。なるほど……。
経費は領収書がないと認めづらいんで、もう「通帳からの出金額からプライベート分を引いた、これが経費です」という言い方をするしかないですね。クレジットカードの明細から拾うこともあります。
──やりようはあるんですね。そんな形になっちゃったとしても、申告したほうがいいんですね。
そうですね。あとの処分などはもう、そのときの税務署の調査や折衝で決まるという感じですかね。
──まあ、追徴課税のペナルティはあると思うんですけど、それ以上のペナルティってないんですか。たとえば「申告したらバレて、脱税で捕まっちゃうんじゃないか」とか。
脱税で逮捕されるというのは、かなりの高額で放置している人とかなので……。そういう方は大ゴトですけど。もう、億レベルの話です。
──そんな高額の場合ですか。長期間無申告だと、やっぱり今更、申告しづらいと思うんですよね。それでも、やっぱり申告したほうがいいですか。
高額ではない方で、逃げたり、隠れたりするつもりがない人を逮捕するということはないと思います。追徴課税分をしっかり払う意志があれば、大丈夫ですね。
無申告で依頼する人を軽蔑しないの?
──無申告で相談に来る人って、なかなかな状況ですよね。
まあ、「無申告だ」なんて、誰にも言いたくないですよね。それを相談しに来ているわけですから、それなりの重い話にはなりますよね、ご本人にとっては。
──税理士さんって、無申告で依頼してくる人のことをどう思ってるんだろうって、ちょっと気になるんですけど。税理士さんにも軽蔑されながら、確定申告の準備をすると思うと、耐えられないというか……。
そんなことはないですよ。無申告の人って、単に「ズボラな人」が多い印象です。そしてまあ「税理士に相談しよう」と判断に至っている時点で、悪い人はいないのかなと。
──たしかに。「なんとかしたい」って、思っているわけですもんね。
世の税理士は、世の中に無申告になってしまっている人が山程いるってことは、重々承知ですからね。
──無申告の本人は「自分はもう取り返しのつかない重い罪を犯している」って、思いつめそうなものですが……。
いやいや、無申告の人は結構います。結構いますんで。とにかく、放置したままではなく、一歩踏み出そうとしている気持ちとは、真摯に向き合いたいですね。
──なるほど。本日は、貴重なお話をありがとうございました!
これからの確定申告はデータ化で準備しよう
無申告は、時間の問題で必ず見つかるということが、改めてわかりました。
無申告の場合、無申告加算税、延滞税、重加算税といった追徴課税が課せられますので、しっかりと申告して納税しましょう。
とはいえ、やっぱり確定申告は面倒ですよね。そんな、毎年の確定申告をなるべく楽に行ううえで便利なのが、Acrobatのアプリ版にある「Adobe Scan」という機能です。
レシートをペタペタ貼ったり、いちいち請求書をプリントアウトしてファイリングしておく手間は、もう必要ありません。
使い方は簡単で、スマホのカメラをレシートや請求書で撮影するだけ。紙の傾きやゆがみが自動補正され、不要な背景も削除した状態でPDF保存できます。テキストもしっかり認識され、後から検索することも可能です。
さらにAdobe Acrobatのオンラインツールを使えば、複数のPDFをひとつにまとめられます。たくさんの領収書や請求書のデータは「PDFの結合機能」でひとつにまとめ、「PDFのファイル圧縮機能」で圧縮。簡単、便利に必要書類を保管しましょう。
ちなみに、ぼくのお気に入りの機能は、WordからPDFへ変換したり、PDFからWordへ変換したりできる機能です。
Wordでオシャレなフォントを使っている際、そのフォントを持っていない人が開くと、フォントが変わってしまいます。MacのフォントがWindowsだと変わってしまうこともあります。
PDFで変換しておけば、オシャレなフォントを埋め込んだ状態で書類を渡せるというわけです。
フォントの種類で、書類の印象って、かなり変わりますからね……。大切な機能です。
無申告、ダメ、ゼッタイ。今は便利なツールもたくさんあるので、上手に活用して、しっかり申告しましょう!
<取材協力>focAs会計事務所&労務事務所